陥入爪
前から、爪の角が母趾に食い込んで痛かった。2,3週間前から腫れて熱を持ち、じっとしていても痛い。
若い男性でスポーツ選手などに多く、母趾の先が赤く腫れて痛み、浸出液や膿の排出をみる。診断は一目瞭然だが、爪角の部分の皮膚を押すと、激痛があるのが特徴である。母趾の爪角が爪溝から出るときに皮膚に食い込んで、炎症や細菌感染を起こし痛む。腫れと痛みのため、通常の爪切りでは爪角が十分に切除できず、切り残しが槍の穂先状となって、皮膚に食い込む。この悪循環を断つために、まずニッパー型の爪切りか、直の眼科剪刀で、爪角斜めに切り落とす。思い切って刃先を突っ込まないと切り残すので、痛みが強い場合には、キシロカイン液やゼリーで表面麻酔してから切る。その後は毎日2~3回、微温湯で5分間足浴を行ってから、水中で柔らかいブラシ(使い古しの歯ブラシ)を使い、老廃物を爪溝を中枢から末梢に向かって掃き出す。これはマッサージ効果もあり、温浴と相まって血行を改善し、腫脹を軽減する。石鹸を使ったときは、ぬるま湯のシャワーで十分洗浄してから、タオルで押さえるように拭く。指で爪溝を広げるように師ながら、ドライヤーの冷風で乾燥させる。イソジンかヒビデンを一滴爪溝に垂らし浸潤ささせた後、再びドライヤーの冷風で乾燥させる。浸出液や多少の拝膿、出血があっても、応急絆創膏(バンドエイド)を巻くと爪溝が閉じるので使用しない。洗いざらしの緩めの靴下を1日何回も履き替えさせ、ガーゼを当てるときも、きつく巻かず、包帯も使用しない。爪が伸びて、爪溝から出て、少しでも皮膚から離れるようになるまで、爪は切らない。爪溝から爪が出たら、爪を水平に切る。爪溝の腫れが治まるまでは、1日2、3回の足浴を続け、つま先のきつい靴を避け、清潔を保つ。初回であれば、9割がこれで治癒する。何度も繰り返して爪溝が繊維化した肉芽で埋まっていたり、すでに手術が行われていた場合には、手術をせざる得ないことが多い。フェノールや塩化銀で爪溝の外側の皮膚を瘢痕性に収縮させ、爪溝を広げる方法がある。爪溝の外側の皮膚を「V」字状に切り取って縫合せず、生の創面を露出させたまま瘢痕性に治癒、収縮させ、爪溝を広げ浅くする手術もある、爪の縁を縦に帯状に切除し、爪溝を「V」字状に肉芽や瘢痕を切り取って縫合することで、爪溝そのものを埋めてしまう手術もある (鬼塚式)。部分抜爪する際、爪の母床を十分に切除しないと、分裂した爪が副爪のようになり、引っ掛かって当たる。爪全体を抜いてしまう全抜爪は再生爪が前より良い爪になることはないので禁忌である。両端の部分抜爪も、爪がまくれあがって引っ掛かりやすくなる。
(参考文献:足のクリニック)